忘れ物

朝、T大へ行く途中、千葉駅でポケットを探したら、定期券入れがなくなっていた。

定期券いれは、お尻のポケットに普段は入れていて、座るときには、邪魔なので胸ポケットかカバンにいれる。しかし、今日着ていたジャケットは、胸ポケットが小さくて、いま一つ。そこでカバンに入れればよかったのだけれど、気の迷いで、内ポケットに入れた……つもりだった。しかし、その内ポケットは内ポケットではなく、底がないただの素通し状態。ポトリと下に落ちたのだった。

もしも、立って歩いている時だったら、音や気配で気がついたかもしれない。
しかし、席に座っている時だったので、まったく気がつかなかった。

例によって朝5時半起きだったので、移動の車中はひたすら眠い。
終点千葉駅で、大勢の人がおりる気配に、ハッと飛び起き、改札に向かう。
改札でポケットというポケット、カバンの中という中を全部探したけれども、定期入れがない。
徐々に醒める意識で、「あっ、車内に落としたのか」と思い至る。
改札の駅員さんに相談すると、「電車まだホームに停まっているはずだから行ってみれば」とアドバイス。
一縷の望みをもってホームに駆け上がると、はたして、一足違いで中野行きの総武線はドアが閉まる。いや、仮にドアが開いていたとしても、すし詰め状態の電車内に分け入って拾い上げることはできなかっただろう……。

ホームの駅員さんに相談すると、ホーム上の詰め所に案内される。遺失物の書類に記入。
「次の駅で調べるっていうわけにはいかないと思うんですよ」と駅員さん。
それは理解できる。あんなにすし詰めじゃあな。
「終点の中野についたところで、お調べしてご連絡します」
一時間後、携帯に電話をくださるという。
「もし、そこでなかった場合……途中の駅やなんかで駅員に届けられたりした場合ですね、コンピュータに入力をして処理をしますので、夕方になってから、こちらの電話の方にお電話ください」
JEF千葉っぽい、ラスタカラーの紙片が手渡された。

この間、かれこれ15分。

T大のお仕事、ぜったい遅刻だ……と思ったが、不思議に間に合った。
いや、授業の前のミーティングはもう、ほとんどすっぽかし。なんとか授業開始前にたどり着いたという状況にすぎないのだが。

授業開始から一時間。
駅から電話。なかったという。

それからしばらく。
御茶の水T研究所から電話。飯田橋に届いているという。
定期入れに名刺を入れていたのが幸いして、うまい感じで連携がとれた。

しかし、飯田橋か……なぜだろう。ひょっとして、そもそも電車に乗る前に落としていたのだろうか……。
なにはともあれ、無事に戻ってきてよかった。