未来時給

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個人的に、週刊の経済雑誌の中では、「東洋経済」が一番好きだ。「日経ビジネス」は、一人称が「日本」になるナショナリスティックな感じがしてどうも……。保護主義的だし、経営者擁護的だし。
その点、東洋経済は、(比較的)コスモポリタン的だしリベラルな感じだし。石橋湛山以来の小日本主義の伝統が生きている気がする。数年来、年間購読中。

今週の特集は「未来時給」。いろんな業種の時給ランキング。そして将来その時給はどうなるのか。
まぁ、軽く読みながしていただけだったのだけれど、週中に、アンケート用紙が届き、答えたら漏れなく500円の図書券というので、目先の金に目がくらんで、改めて読んでみた。

大学の先生は、給料は安いけど、時給は高いということになっている。これは、ちょっと乱暴な計算ではないかなぁ……。確かに、授業は、週に数回で、その時間で給料を割ったら時給は上がる。しかし、授業のために下調べをしたり、教材を作ったりするのには、授業の何倍も時間がかかる。さらに大学を本務にすれば、教授会やらナントカ委員会やら、細々と打合せに時間をとられる。「研究日」だって、休みじゃなくて、仕事のうちだ。
そう考えると、時給は機会組立工とか、販売店員と変わらない計算になる。大学の先生は、なるのは大変なのに、割にあわない仕事だと思うなぁ。

中国と日本の賃金格差がなくなりつつある業種のひとつとしてアニメーターが挙げられていた。
以前、日経系のある雑誌でも似たような特集があって、ある知人が取材を受けていたのだけれど、「あんまり雑誌が、アニメーターは安月給で大変だって、負の側面を強調して書くので腹に据えかねる…」と、「モノになる人はきちんと稼げるし、同世代のサラリーマンよりずっと稼ぐ」ということを何度も力説した。それにも関わらず、その雑誌は、相変わらずステレオタイプの記事を書き、「最初に結論ありきで、事実をねじ曲げている」とかなり怒っていた。今回の東洋経済の記事は、見出しこそ、従来のステレオタイプの延長線だけど、内容としては、負の側面の強調というわけではない。東洋経済の取材姿勢を個人的にちょっと見直した。

業種別の生涯給料ランキングの記事もあった。それによると、コンテンツ業界では、GDHが生涯賃金3億2136万円で、スクウェア・エニックスや東宝などよりはるかに高いのだった。ていうか、新卒入社から定年まで勤め上げた人がいない会社、トップの年齢が40代の会社の生涯賃金を出してみても、意味があるのかな……。

そういえば、某T社が、大学生の入社希望ランキングでここ数年上位に食い込んでいるけれど、その理由が俺には透けてみえる。リクルート関連の紹介雑誌に乗るT社の平均年収は、同業他社よりも、ちょっとばかり高いのだ。しかし、学生諸君のアサハカなことよ……T社の社員の平均年齢は高いぞ。平均年収も高くて当然だわいな……。

クリエーターのキャリアパス……というのは、ちょっと人によってマチマチで、またサンプルも少ないので、一般化は危険だと思うけれど、生涯賃金としては……クリエーターにも関わらず社員という身分で入社して、その後、契約に切り換え歩合で給料をもらい、さらにその後、クリエーターとして通用しない年齢になったときに、一般職として社員になって、退職金をもらいながら定年……というキャリアパスをたどるのが、自分で起業しない場合の、マックスになるのかなぁ……?。こうした「余生」を送るクリエーター上がりの社員の存在がT社の社員の平均年齢・平均年収を押し上げている? 「受験の成績」がマネジメント能力と相関があると信じられているけれど、そんなのは、ドグマにすぎないんだから、「クリエイティビティ」がマネジメント能力と相関があるという教義を信奉する企業がこの広い世の中に一つ二つ存在したって、悪くはない。

ともあれ、「未来時給」の特集は、平たくいえば、「将来、効率よく稼げる仕事は何?」ってことだけれど、個人的には、その「効率」が政治・法律によってもたらされている仕事の将来は暗いと思う。現に、大学や歯医者の黄昏は意外と早くやってきた。薬剤師や弁護士はどこまで耐えられるんだろう……。海外だと、放送局はうまく業態転換ができてる感じだけれど、新聞社はかなり瀬戸際だな……。
そう考えると、楽な商売ってそうはないなぁ……効率が悪くとも好きな仕事をするのが一番か……。でもなぁ……。

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このページは、washiが2007年5月16日 22:37に書いたブログ記事です。

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