washi: 2006年5月アーカイブ

日曜日は、多めに食材を買ってきて、作りおきのきく料理を作ってる。

最近のお気に入りは煮豚。
水3カップに生姜とニンニク、豚肉の固まりを入れて、アクをとりながらコトコトと30分。
醤油1カップと、ミリン1カップ、砂糖大さじ1杯を足して、豚肉を裏返して、またコトコトと30分。

手をかけずに、美味しくできるんだけど、時間の割に少量しかできないので、食べるのがもったいない。
ラーメン屋のチャーシューってこうして見ると贅沢だよなぁ……。自分で作るようになってからしみじみと思うようになった。

色んな人の思惑が絡んでいて、これを解きほぐすのは嫌がられるだろうなぁ……という仕事があって、面倒だなぁ、気が重いなぁ……と思っていると、どんどん先送りになってしまう。
そろそろ、いよいよもって、ニッチモサッチモいかなくなってくる。
これではいかんよなぁ。

嫌な仕事が嫌なのはみんな同じ。俺がやっても、他の人がやっても同じ。
気持ちを強くもって、やらないと。
「毒食らわば皿まで」だ。
いつか食わなきゃいけない毒ならば、人に先んじてさっさと食えば、回復も人より早くできるだろう。

深夜番組で、高飛び込みにビビッてウロウロしている芸人を長々と映すヤツがある。
あれと同じだなぁ……と思ったりする。
「サッサとやればいい」と脇で見てれば思うのに、いざ、自分が飛び込み台に上がると足がすくむ。
もしかしたら、対処法も似てるのかもしれない。
対処法……低いところからだんだん高いところへ移る。何回も高いところから飛び込んで慣れる。あとは何だろう?

ともあれ、毀誉褒貶は人の世の常。心にテフロンを。面の皮を超合金に。

大した仕事もしてないはずなのに、日々の過ぎることの早いこと早いこと。

株は売りっぱなしで、証券会社に現金のまま置きっぱなしにしていたら、どんどん上がって「あーもったいない」と思っていたら、また、どかーんと下がってる。買い場か。買い場なのか。
で、どかーんと下がってる間に、中国の不動産やインドのIT企業のファンドが値上がりしてる。「捨てる神あれば拾う神あり」と思っていたら、こっちもいつのまにか、どかーんと下がってる。
お金ってのは、彼女と同じで、コマメに相手をしてないと、愛想を尽かされるってことだなぁ。

久しぶりにロットリングを購入。

あれこれとつのる想いの丈を書いていたら、消えてしまった。
リンクをあちこち開いていて、なんかの拍子で開いた楽天のサイトを閉じたら、長々と書いていた文章ごと消しちゃった。タブブラウザはこれだからなぁ……。

もう一度、同じ文章を書くのもダルいので、もう止めた。

ともあれ、ロットリングは最高ってことで。

初ドンペリ

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縁あって、シャンパンを3種類を飲み比べ。
ドンペリっつうモノを初めて飲むことに。

昼間ッからフランス料理のフルコースとドンペリ……GWのシメとしては最高だったかも。
味なんて、わかったような顔して飲んでも、さっぱりわかりませんでした。
とにかくおかわりしまくりで、ちょっと悪酔いしちゃったかも……。

出社拒否

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ずいぶん長い間のお休みになって、かなり鋭気を養い、明日からのお仕事にやるき満々……と頭では思っているのだけれど、身体がどうも、拒否反応を起こしているようで、カゼをひいてしまった。

熱と鼻づまりで頭が重い……。とほほ。

行楽

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旧古河庭園に初めて行った。
上京したばっかりのころから行ってみたいと思っていたのに、ずっと果たせずにいたが、ようやく達成。

「洋館」のイメージが強いのだけれど、「日本庭園」も見事なんだな。知らなかった。
あぁいう広い庭のある邸宅に住みたいなぁ。
どこまで田舎に行けば、手持ちのお金で、あのぐらいの広さの土地を確保できるだろう?
国内は無理だよなぁ……ベトナム? 亜熱帯じゃ日本庭園は似合わないよなぁ。 北朝鮮? 社会主義国……いや、独裁国家じゃあなぁ……。

がんばって、ヒトヤマ当てることを考えよう。

事故後1年

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去年のGW、5月5日の交通事故から1年。
自宅で大人しくハウスキーピング。

事故の起こった時刻は、なんだか神妙な気持ち。
少しずつ過ぎる時間時間に、ツマのヒトと、「今頃は何をしてた」という会話を交わす。

時の過ぎることの早さ、命のありがたみ、この1年の波瀾万丈・すったもんだに思いをはせる。

この先1年、大過のない良い年でありますように。

国番号

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携帯の電話帳。番号の前に国番号をつけた。
日本の人には+81、韓国の人には+82、中国の人には+86、台湾は+886……

先日上海へ行ったとき、現地の友人と落ち合おうとしていて結局うまくいかなかったことを反省して。
まぁ、事前の準備がちゃんとしていなかったのがそもそも悪いんだけど、メールでの連絡がうまくつかなかった。携帯でダイレクトに話ができれば、決着が早かったのだけれど、Vodafoneの3Gの使い方がよく分かっていなかったし。

国際アクセスコード置換の設定で、日本から海外に掛けるときに使う「0046010」を入力しておけば、海外・国内でいちいち電話帳を書き換えるという設定変更が不要になる。
海外在住の友人の携帯の電話番号も同じように日常的に携帯に登録しておくことができる。

はてさて、もっと、この便利なツールを使う機会が増えないものか……。

最近できたというIKEAに行こうと南船橋へ。

ついてみたら、大行列。すごいすごい……。警備員さんに待ち時間を聞いたら、「そうですね〜。だいたい2時間ぐらいでしょうか」
そんな、せっかくのGWの良い一日を2時間もボーッとして過ごすのはバカバカしい。
急遽ららぽーとへ目的地を変更。

ららぽーとは、昔のなんとなくの印象で、寂れたローカルなショッピングセンターという先入観を持っていたが、いやいやなんのなんの。巨大でしかも活気があるところだった。お台場のデックスとか、みなとみらいのランドマークプラザにもひけをとらない……いやぁあなどれないなぁ。
と、まぁ、色々とモノを見たり、買い食いをしたり、時間はあっと言う間に過ぎて、夜に。

帰りがけ、もう一度、IKEAの前を通ると、さすがに少し人は減っている。じゃあ……ということで、並んでみた。
いやいや、それでも30分待ち。
で、入ってみたら、入ってみたで、スケール感にびっくり。
で、本当にビックリしたのは、値段。安い。お買い得感がすごい。
いやー、これは混むのもわかるわぁ。並んだ甲斐があった。見ておいてよかった。
単に、新しいトコができたということの物珍しさだけだったら、一回行けばそれでおしまいになる。
これは本当に買物したくて行く感じ。僕も今度は、リビングの家具を買うために行きたいと思うもんなぁ。

南船橋……また行こう。

amazon恐るべし

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しばらく前に、アキバのヨドバシで「まとめ買い食材の1週間献立×8」という本を見かけて、買わなかったことを後悔していた。

昨日、ちょっと渋谷に出る機会があって、ついでに本屋に立ち寄り、探してみた。
しかし、結局見つからず……でも、レシピ本を買いたいモードだったので、何か買わずには気持ちが納まらない。

そこで、あれこれと見比べて「うちに帰ってから15分で作れる晩ごはん」という本を買って帰った。

家でamazonを見て、「まとめ買い食材の1週間献立×8」を検索してみたら、「この本を買った人はこんな本も買っています」「あわせて買いたい」に「うちに帰ってから15分で作れる晩ごはん」が載っていた。

amazonの購入実績から導き出されるマーケティングのデータって、必ずしもamazonの中だけで適用されるのではなく、リアルの世界にも効くんだなぁ……。

メンテナンス

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現在、大掃除中。
ゴールデンウィーク、正月休み並の連休になったけれど、正月休みと違って、ゴミの収集が休みにならないのが良い。

書斎の書類をバッサバッサと捨てまくる。
12年前のfaxの送信控えなんて、面白いけど、取っておく意味なさそうだもんな。

オフィスのデジタル化は、自宅のものは、さかのぼってやるのはやめようと思う。
職場だったら、アルバイトを使ってやることもできるからやる意味があるんだろうけど。
自宅のもの、これからのものしか、デジタル化やらないつもり。何はともあれ、デジタル化をきちんとすることに意味がある。

PCのデータもバックアップをとっておかないと。
古いPCからの環境、まだ移行できてないもんな。
大泉の職場は、アクセス制限がきつくて、自宅のPCをlogmeinで操作できないから、不便なこと限りない。

SkypeInと、D-FAXも整理しないと……個人用の名刺も作り直さないとな。そうこうしているうちに、この夏は、マンションの更新時期で引っ越しするかどうかの選択を迫られる。まぁ……とても、引っ越しするような余裕はないと思うけど。ともかく、SkypeInと、D-FAXなら、引っ越ししても連絡先が変わらないのが良い。

sabifooを、アイディアマラソンのツールとして使ってみることにする。
年間1000件のアイディア出しということは、約20個/週。約5個/日ということになる。

出会い

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豫園を見終わり、南京東路へ行こうとしていた。
豫園では歩き疲れたので、タクシーで行こうと思った。タクシーに乗っても運転手と話はできないので、目的地を指し示すために、ガイドブックを手にとって地図のページを開いて待ち構えていた。

すると、英語で話しかけて来る人がいる。タケシ映画によく出てくる寺島進をゴツクして、真っ黒に日焼けさせたような人。僕より、少し年上だろうか。

「ここは○○路で、豫園は、あっちだよ」と。
「知ってる。行ってきたところ。これから、人民公園に行こうとしているところ」と答えた。すると、
「人民公園なら、あっちだよ」と、畳みかけてくる。
「知ってる。だから、タクシーを拾おうと思って」できるだけぶっきらぼうに言い返した。
「人民公園に行くんなら、タクシーなんか使わなくてもいいよ。歩いて10分だよ。こっちだよ。一緒に行こう」と、テクテクと歩きだす。

しょうがなく、僕も一緒に歩きだす。

すると、人懐こくいろいろと話しかけてくる。
「いやー、今日は暑いねー。どこから来た? 日本? おれは天津だよ。天津は、まだセーターとジャケットが必要で。セーターは脱いだけど、ジャケットは着てるから、なお暑いよ」
「なんで、英語がそんなに上手なの?」
「おれは、天津の高校を出た後、船員学校に行って、船乗りとして世界中を回ってるからね」
なるほど、だからゴツクて真っ黒なのか。
「2日前に上海に来て、今日は、仕事が終わったところで、妻へのお土産を探してたところなんだよ。あんたは?」
「いやー、僕も同じく2日前に上海に来て、仕事が終わって、お土産を探していたとこです」
「おれは、お茶を買おうと思っててさぁ……中国人ってのは、たくさん食うけど、太ってる人って少ないだろ。それは、お茶のせいなんだよ。おれの妻は、太ってるからさぁ、お茶を買おうと思ってる」

だんだんと雲行きが怪しくなってくる。
観光客に親切にして、知り合いのお店に連れ込み、お土産を買わせる手合いか?

怪訝な思いを胸に秘めつつも、会話は続く。

彼からは日本に行った話も出てくる。浅草に行ったら、飲み屋で寅さんの格好をした人を見かけたこと。歌舞伎町に行ったら、派手な新聞配達を見かけたこと。

僕は自分が映像業界の末端にいることを話すと、彼が子供の頃見た日本映画の話がいろいろと出てくる。山口百恵や高倉健。
「最近の若いのとか、主婦は、韓国ドラマ・映画が好きだけど、俺は嫌いだ。浅はかで、ワンパターンだから。おれの世代は、日本映画が好きだ。ケンサンの最新作は良かった。リアルで、人間の本性に訴えかけるよ。おれはびっくりした。あのケンサンが泣くんだよ。自分の感情を抑えられなくて……」

日本ヨイショの後は、お国自慢。
「今、中国は世界で6番目の経済大国になってる。あと20年もすれば世界一になるよ。20年前、上海に来たときは、完璧に何もなかったからね」
「20年じゃないでしょう……19年じゃないの?」
とヨイショのお返しをすると、大笑い。

そうこうしていると、人民広場に到着。
「どうすんの?」
「そうですね……ぶらぶらしながら、外灘の方へ行こうかと思います」
「じゃあ、途中まで一緒に行こうか」

途中のデパートというか、大きな土産物屋に入った。買い物をする人たちでとても賑わっている。
「スリが一杯いるから、鞄を体の前の方にして」
と忠告してくれる。
お酒やお茶のショーウィンドウをあれこれと見る。
「値段を見るだけだよ。豫園はここの3倍の値段だっただろ」

一周してすぐに出る。
脇道に入って、今度はお茶の専門店に入る。
「そんなに安くないなぁ……もう一軒行こう」
とさらに脇道へ行こうとする。

僕もとうとう我慢できなくなって、
「えーと、そろそろ、僕はこのあたりで失礼するわ。南京東路の方にもどる」
と、言った。すると、彼は慌てて
「待て待て、あなたは、私を誤解している。私は出会った記念にあなたにも小さなプレゼントがしたいだけだ。これは中国の習慣だ。あと1軒だけつきあってくれ」

必死の形相なので、僕も折れて、しょうがなくついていく。まぁ確かに、もの売りにしては話ができすぎている。

ほどなく一軒のお茶の専門店に到着。
まじめそうな若い夫婦が二人で切り盛りしている小さなお店。サービスでお茶が一杯出てきた。

彼は、店主とやりとりをする。
「龍井茶の獅峰の新茶があるって? 見せてみろ」
小さなビニール袋を小抱えにして店主がやってくる。
彼は、袋に顔を埋めて匂いを嗅いだり、1・2枚指先に取って折って見せる。
「これは本当に新茶だ。新茶だからほらパリパリと折れるだろ。去年のものだと、しんなりしちゃうんだ」
彼はそれを袋に詰めさせる。2つ袋を作らせ、そのうちの一つを自分の鞄に入れ、もう一つを僕に持たせる。

「いや、受け取れない」
「受け取ってくれ。これは、中国の習慣だ」
「何と言っていいか……」
「じゃあ、代わりにタバコでも買ってくれ」
「そうさせてもらいます」

折しも、そのお茶のお店の隣には、おばあちゃんが一人で店番をしているようなお店があった。
そこで、タバコを1カートン購入。800元(約12000〜13000円)。
(正直、ちょっと高いかな……と思ってしまったけれど)手持ちの現金をほとんど吐き出した。

なんだか、複雑な思いで南京東路に戻る。
「じゃ、ここで、失礼する。外灘はこの先、5分」

一応、握手はしたけれど、別れはあっけなかった。
手元にはお茶の袋。

ふと思い返せば、彼の名前も聞いてなかった。連絡先も知らない。
親切にしてもらったにも関わらずずっと半信半疑でいたり、高級なお茶をもらったにも関わらずお返しのタバコを高額と思ってしまったり……俺ってサイテーだなぁ。
もう取り返しがつかないことに、後悔、後悔、後悔……。

帰宅してから、ネットで龍井茶を検索。
龍井茶は、中国茶の中で最高級。
獅峰は、龍井茶の中で最高級。
今の時期にとれるものは、龍井茶の中でも最高級。

楽天で見ると、高いものでは、50gで7500円の値段がついてる。安くても40gで1200円だ。手元にあるのは500gもある。というか、そもそも、出品がすごく少ない。
昨日の夜から、何度かお茶・コーヒーを飲む機会はあるのだけれど、まだこの龍井茶の袋は開封できずにいる。

間違えられた

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最後の日、一日オフを作って、上海観光をしてきた。

現地の人に、「日本人だってわかると、スリとかに狙われるから、気をつけてね」とも言われていたので、用心していたから……というのもあるけれど、どこに行っても、日本人とは思われず、中国人として扱われた。
もう、中国語で話しかけられまくり。道を聞かれたり、時間を聞かれたり。これは、ポン引きや物売りが探りを入れてたから……というのもあるかな。ていうか、中国語しか話せない人がほとんどだからってのが一番かな?

とはいえ、それはまぁ、よくある話といえばよくある話。

豫園へ行ったところ、日本からのツアーの集団がいて、日本語のガイドが面白い話をしていた。僕も一応ガイドブックは持っていたけれど、そこには載っていない裏話をたくさんしていたので、後ろをついていって、便乗してただ聞きさせてもらっていた。
そしたら、ツアーの日本人の初老の夫婦が僕に話しかけてきて、「Do you take a picture?」と。まぁ、日本人英語には目をつぶって「sure」と答えて、撮ってあげた。
フラッシュがたかれて、顔が白く飛んでしまったので、「フラッシュが点いちゃったんですけど、大丈夫ですか?」と日本語で、こっちが言ったのに、「OK, OK, no problem. Thank you」と、あくまでも非日本人扱い。

と、もしかしたら、まぁ、それも、よくある話かもしれない。

東方明珠タワーへ行った後、階下にある「上海城市?史?展?列?」に行った。
陳列館の中は、蝋人形で昔の生活の様子が再現されている。音声ガイドを借りて、見て回った。広い会場をずっと、見て回っていたら、疲れてきて、音声ガイドの続きをベンチに座って聞いていた。
しばらくしたら、後続の人たちが私の前で立ち止まり、解説板と私を見比べる。
何事かと思ってギョッとすると、その人たちはびっくりして逃げて行った。
何を言っているのかわからなかったが、どうも「人形かと思ったー」「人間だったねー」と言っている様子だった。

今回の上海行きで一番最初に感じたのは、上海人と日本人は違う原則で生きているということだ。日本人、という括りが適切かどうかはわからないが……。少なくとも、僕の良く知っている秋田県人や東京都民は違う。

僕が上海人の原則を言葉にするなら、「自分個人の現在の利益を最大化せよ」ということではないかと思う。
端的に現れているのは、ドライバーや歩行者の往来だ。
たとえば車の場合。
空港から市街地へ向かうのや、市街地での移動にタクシーを使ったのだけれど、これが……目の前でモタモタしている車があると、すぐに車線変更。体感的には5秒に1回は車線変更。120キロで走っているのに車間距離1メートル。割り込む隙間がちょっとでもあれば、ぐいぐい割り込む。割り込ませないように、車間距離を詰めるし、クラクションを鳴らす。そしてなにより、自分が先頭を走ろうとする。
歩行者は、道路を横断するのに、渡りたければどこでも渡る。信号は見ない。
車も、人が渡ろうとしていてもお構いなし。一時停止して人を通してやろうとかはしない。逆に人に通られないように、クラクションを鳴らして、ちょっとの隙間をみつけて加速して通っていこうとする。
だから、往来はクラクションだらけ。寝ていても朝寝坊なんかできない。6時を過ぎれば通りの喧騒で目が覚める。クラクションは自己主張であり、争点の明確化であり、責任範囲の限定であり、免責の印だ。

ほぼすべての局面でこの原則は貫かれていると見ていい。
たとえば、空港でカートを職員がまとめて移動させるような場合。
日本だったら、職員は、客にぶつけないようにルートを選ぶだろう。進路で人が障害になっているときは待つか、あるいは、「すみません。カートが通ります」と言ってどいてもらうだろう。ぶつけたら「すみません。失礼しました」と言うだろう。
上海の場合、基本的に目的地に向かって最短距離を行こうとする。進路で人が障害になっているときは、声をかける。そしてそのまま最短距離を進む。ぶつかったとしても、こっちは声をかけたんだから悪くない。ぶつけられたくなかったら、そっちがどくか、こっちに「あっちへ行け」と主張しろ。それをしないで、ぶつけられるのは、怠慢であり、そちらの責任だ……となる。

お店の店員だって、食堂のウェイトレスだって、美術館のキュレーターだって、みんな客のことはお構いなしにだべって、おしゃべりに夢中。「こっちはこっちのやりたいことをやる」「かまって欲しけりゃ声をかけろ」とそういう姿勢。

ルールというのは、科学的法則と同じで、シンプルなもの、例外のないものほど強く正しい。ニュートンの物理法則より、アインシュタインの相対性理論の方が相対的に強く正しいのと同じだ。

上海人の原則はシンプルで明快だ。
欧米人にとっても、これは分かりやすい。
だから、多くの外国人を惹きつけるのだろうと思う。

ただ、総体として見たとき、この行動は合理的なのかと疑問を感じずにはいられない。合成の誤謬を起こしているとしか、僕には見えない。

たとえば、車の運転や歩行者の横断だって、日本の自動車教習所で習うようなやり方の方が結果的に良いだろう。
他者に思いやりをもって接した方が、総体での事故も減るだろう。
あんなにウネウネと車線変更をしない方が、トータルでの走行距離は減るだろう。ガソリンだって、タイヤだって節約できるだろう。
早い車ほど中央寄りの車線を走り、追い越しをしていくとした方が、最大多数の最大幸福を実現するだろう。
あんなに全身全霊を使って、車を運転したり道を横断したりしなくても良い方が、その他の本来やりたいことに精神と体力を割けるだろう。

池の鯉に麸を投げ込むと、鯉がみんな我先に飛びつく。
躍動する鯉は充実感を味わってるだろうなぁ……でもなぁ……と思う気持ち。それに近い。

どこで読んだ話か忘れたけれど、戦争に負けて日本人が中国から引き上げるとき、引き上げ船に我先に殺到するのではなく、そんな時でも整然と列を作って順番に乗り込む姿を見て、中国の人は日本人に対して底知れぬ怖さを感じたそうだ。
わかるわかる。

ただ、日本人の原則が普遍的に通用しないことは明白だ。
我先に麸を奪い合っている一群の後ろで、自分の順番を並んで待っている鯉は、餌にありつきそこねるだろう。
あるいは、逆に、自分の順番を並んで待っている一群に、やりたいことをやりたいようにやる一匹が迷い込んだら、こんなに楽なことはないだろうな。

はてさて、日本がおかれている状況の理解は改めて深まった気がする。
僕が日頃おつきあいをしている中国人の友人と、日本に来たばかりの中国人との違いのミッシングピースも見つかった気がする。
僕が村上龍の「すべての男は消耗品である」的な価値観に軽い嫌悪感を覚えるのにも、またひとつ理由がつけ加わった。
では、自分はどう行動するべきなのか……ということには、まだ、はっきりとしたものが見つからず、上海でも機内でも、そして今でも、あれこれと思案にくれている状況。

折しも、成田空港について、イミグレーションに向う途中、広告の看板が出ていて、どこかのゴルフクラブだかボールだかのコピーで「ルールには従う。常識は疑う」というのがあった。個人的には失笑を禁じ得なかった。それが「カッコイイと思ってもらえる」「人々にアピールして商品を買ってもらえる」と思っている人々の大勢住む場所に自分は帰って来たのだと。

無事帰宅

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昨日の1時頃、空港に到着。イミグレーションに1時間。都心に戻るのに1時間。
3時には自宅。荷ほどきも5時には終えちゃった。

なんだかこう、別世界にポコっとはまったという感じが、移動のあっけなさからますます強く感じる。

中華圏として、私が行ったことがある都市は、台北、深セン、上海だけである。
どこも似ていない……ということで、中国の多様性を感じる。
また、どこも似ている……ということで、中国の一様性と、日本との異質性を感じる。
はたまた、日本と似ている……ということで、日本との同質性も感じる。
さらには、アメリカや韓国……といったその他の国々との比較も可能か……

パスポートを見返していたら、深センに行ったのはもう4年も前のことになっていた。
もう一度、行ってみたいな。もう、だいぶ変わってしまっているんだろうな。
北京や天津にも行ってみたいしなぁ。